第38回東京国際映画祭:パールフィ・ジョルジ監督作『雌鶏』プロデューサー、タナシス・カラタノス氏独占インタビュー

GREEK

2025年10月27日(月)から11月5日(水)まで都内各地で開催中の今年の第38回東京国際映画祭で、ギリシャは以外な存在感を示している-ハンガリーの鬼才パールフィ・ジョルジ(Pálfi György)監督の最新作『雌鶏(HEN)』が、映画祭のコンペティション部門に出品されているからだ。

小林一茶の俳句で幕を開ける本作は、ギリシャで、ギリシャ語で、ギリシャ人俳優とギリシャ人スタッフによって全編が撮影されたギリシャ、ドイツ、ハンガリーの合作作品だ。

GreeceJapan.comは『雌鶏(HEN)』のプロデューサーであり、映画祭への出品のために東京を訪れているギリシャ系ドイツ人プロデューサー、タナシス・カラタノス(サナシス・カラサノス/Θανάσης Καραθάνος)氏にインタビューを敢行。1967年ベルリン生まれ、現在もベルリンを拠点に活動するカラタノス氏は、1998年に自身のプロダクション会社Twenty Twenty Visionを設立し、2003年にはPallas Filmを共同設立している。これまで40本以上のギリシャ国内外の映画に携わり、ポール・バーホーベンや河瀨直美といった世界的映画監督らと作品を作り続けている氏にお話を伺った。

インタビュー:永田純子(Junko Nagata)
*インタビューはギリシャ語で実施された。

第38回東京国際映画祭のポスターの前に立つタナシス・カラサノス/photo: Junko Nagata

まず、ハンガリー人であるパールフィ・ジョルジ監督が、なぜギリシャで、しかもギリシャ人のキャストとクルーで映画を撮影することを決めたのか、という当然の疑問から始めましょう。この作品はハンガリーでも他の国でも撮影できたはずですが。

パールフィ監督は近年、ハンガリーの政治情勢が、政府の方針にそぐわないアーティストにとって特に厳しい状況にあるため、資金調達に苦労していました。そこで彼は私のところに脚本を持ちこんだのですが、その内容に私は感銘を受けました。当初彼は自身が1年間住んでいたメキシコでの撮影を考えていたのですが、私は彼にギリシャでの撮影を提案したのです。それに、ストーリーの一部で難民問題に触れていたことから、北アフリカやアジアからヨーロッパに向かおうとする多くの人々にとっての玄関口であるギリシャは、この物語にぴったりでしたから。

キャストが様々な国から来ていることを考えると、彼らと仕事をするのは大変だったのではないでしょうか。

パールフィ監督にとって、初めのうちは確かに困難なこともありました。メインクルーがギリシャ人だという状況の中、自分が知らない言語で撮影しなければなりませんでしたし、ギリシャで撮影を行うのも彼にとって初めての経験でしたから。しかし監督は撮影のため、入念に準備を重ねていました。彼は撮影開始の1年前にアテネに移住し、暮らし、様々な人々と出会い、ギリシャでの日常生活に慣れていったのです。こうした準備の甲斐あって、撮影が始まった後はすべてが素晴らしくスムーズに進みました。

『雌鶏(HEN)』のワンシーン

映画に登場する動物たちの自然な演技にとても感動しました。これは、CGやAIで作られたものではなく、実物の動物による演技だと伺いましたが、動物との共演がどうしてここまでうまくいったのでしょうか。

本作品では、様々な作品を手掛けてきたハンガリー人のトップクラスの動物トレーナーと協力して作品作りを行いました。鶏を使った映画を撮影するのは容易なことではありません。しかも、今回は8羽もの鶏が主役を演じたわけですから!トレーナーはまずハンガリー国内で、キツネ、イヌ、ハヤブサといった他の動物たちとともに鶏たちを訓練してから、その後撮影のためにギリシャに連れてきてくれました。こうして”彼ら”は万全の準備を整えていたため、撮影に無駄な時間は一切ありませんでした。すべてが遅れも追加の作業もなく、スムーズに進みました。

もし動物のオスカー賞があったなら、私はこの雌鶏を主演女優賞にノミネートするでしょう!

私もです!彼女は本当に受賞に値すると思いますね。もしそんな賞があったなら、間違いなく受賞していたことでしょう。彼女はまさにこの映画の主人公です。物語はすべて彼女の視点を通して展開され、登場人物の人間関係が次第に明らかになる映画の後半になっても、私たちは決して彼女を物語の外に追いやることはできません。私たちは常に雌鶏の視線でものを見、彼女自身の視点の中に留まっているのです。

雌鶏が雄鶏と出会い、恋に落ちるシーンで流れる2曲のギリシャの歌「Επίσημη αγαπημένη(エピシミ・アガピメニ)」と「Τα Μαύρα Μάτια Σου(タ・マヴラ・マティア・ス)」のチョイスがとても気に入りました。これらの歌はあなたが、それとも誰か他のギリシャ人制作関係者が選んだのでしょうか。

あの歌はパールフィ監督が自ら選んだのです!正直なところ、私は彼がシーンにぴったり合うこれらの歌を的確に選び、物語に見事に溶け込ませたことに驚きました。すべて監督自身の選択によるものでしたが、結果としてそれが大きな成功を収めたわけです。

東京国際映画祭での『雌鶏(HEN)』初上映に対する観客の反応はいかがでしたか。この映画は日本で成功すると思われますか。

私も出席した映画祭での初上映では、観客の反応は非常に良好でした。会場の雰囲気はとても素晴らしく、上映後には興味深く有意義な質疑応答が行われました。この映画が観客の心に深く響いたと感じました。私はこの映画が日本で間違いなく成功するであろうと確信しています。既に日本国内での配給のオファーも受けており、日本の映画館で一般公開される可能性が非常に高いと考えています。

東京国際映画祭でのコンペティション部門への参加の後、この映画はどこに旅するのでしょうか。ギリシャではまだ上映されていないと思いますが。

この映画は、トロント国際映画祭でワールドプレミア上映され、その後、サンセバスティアン映画祭でヨーロッパプレミア上映されました。その後、ローマとハンブルクでも上映されています。東京の後は、今年11月9日(日)までギリシャ・テサロニキで開催されているテサロニキ国際映画祭(The 66th Thessaloniki International Film Festival)のクロージング作品として上映される予定です。

タナシス・カラタノス/photo: Junko Nagata

あなたと日本映画との関わりについて教えていただけますか。日本映画の中で、特に好きな監督や作品はありますか。

私はこれまで、いくつかの日本映画の制作に携わるという幸運に恵まれていますが、河瀨直美監督の『あん(2015)』では共同プロデューサーを務めました。現在はフランス在住の日本人監督の新しいプロジェクトに取り組んでいるところですが、これはまだほんの初期段階ですね。

監督としては、深田晃司監督や是枝裕和監督といった監督の作品をとても興味深く見ています。もちろん、黒澤明監督や小津安二郎監督といった古典作品も大好きです。特に黒澤監督は私の敬愛する監督で、彼の作品は全部、何度も観ています。

本当にありがとうございました。映画の成功と今後のご活躍をお祈りしています。

パールフィ・ジョルジ監督作『雌鶏(HEN)』映画祭公式トレーラーほか詳細はこちらから

永田 純子
永田 純子
(Junko Nagata) GreeceJapan.com 代表。またギリシャ語で日本各地の名所を紹介する  IAPONIA.GR, 英語で日本を紹介する JAPANbywebの共同創設者。

関連記事

FOCUS GREECE-JAPAN

最新記事