
長崎ヴェルカのヴァジェリス・ジアコス(2023-24)、三遠ネオフェニックスのエヴァンゲロス・マギラス(2025~)に続き、日本のプロフェッショナルバスケットボールリーグ・B.LEAGUE PREMIERで新たなギリシャ人コーチが活躍している。開幕以降現時点(*2026.10.28)で10勝1敗と絶好調の成績で突き進む広島ドラゴンフライズで今シーズンからアシスタントコーチを務めるディミトリス・バルバニス(Δημήτρης Βαρβούνης)だ。
GreeceJapan.comはそんなバルバニス氏に独占インタビュー。日本でコーチとしてのキャリアを続けることを決めた理由から、広島ドラゴンフライズについて、日本とギリシャのバスケットボール文化の違い、そして家族とともに暮らす広島での日常まで、様々なテーマについて語っていただいた。
インタビュー:Junko Nagata
日本でコーチとしてのキャリアを続けることを決められた理由は何でしょうか。
2024-25シーズンからギリシャ・ミコノス島のチーム、ミコノスBCで3シーズン連続でヘッドコーチを務めているジアコスコーチから日本についての話を聞いたのですが、彼は日本人のバスケットボールに対するほかの国と異なる取り組み方を高く評価していました。日本ではスポーツを喜びを得るための活動として捉え、またこれを健康増進に役立てることが大切にされているのだと。それだけでなく、様々な街を旅して新しい土地を知るという経験の素晴らしさについても教えてくれました。
ジアコスコーチとは、アンダーエイジカテゴリーのギリシャ代表と、ミコノスBC(*2025-26シーズン)との両方で一緒に仕事をした経験がありましたから、いつか日本でコーチとして働いてみたいという思いは、すでに2年前から私の頭に浮かんでいたのです。
そうこうするうちに、幸運なことに、一年ほど前にとある選手たちについて意見を交わしたことのある三遠ネオフェニックスのマギラスACから、日本に来る意思はあるかと尋ねられたのです。私の答えはもちろん「ぜひ行きたい」というものでした。マギラスACは、三遠の大野篤史ヘッドコーチと親しい関係を築いている広島ドラゴンフライズの朝山正悟ヘッドコーチに繋いでくれ、そこから互いに連絡を取るようになりました。
実際に来てみて、この決断は正しかったと感じています。日本は本当に美しく、毎日を楽しく過ごしています。

広島ドラゴンフライズの組織やコーチングスタッフとの連携について、第一印象はどんなものだったのでしょうか。
チームのゼネラルマネージャーであるシュウジさん(岡崎修司GM)と、ヘッドコーチのアサさん(朝山正悟HC)が、とても温かく迎えてくれ、すぐにチームの一員として受け入れてくれたことが印象的でした。チームには互いを尊重する文化に根ざした素晴らしい一体感があり、今の時代、こうしたことは非常に重要であると私は思っています。チーム全体に家族のような温かい雰囲気があり、それがチームだけでなく、私自身の日常生活についても円滑に進むために大きな役割を果たしています。日本に到着したその日から、皆さんが親切に接してくれましたし、それはトレーニングの場でも同じです。
バスケットボールそのものは、どこへ行っても同じです。14人の選手と1つのボールがある、それだけです。目指すものは勝利ではありますが、敗北から学ぶこともまた大切です。しかし、心地よく、温かく、家族のように働くことのできる環境は簡単に見つかるものではありません。
広島ドラゴンフライズにはしかし、こうした環境があります。ポジティブな雰囲気は、マネージャーや運営陣から始まり、コーチへと伝わり、チーム全体に広がっていきます。そうすることで、私たちは効率的に機能し、良いバスケットボールをプレーしながら、同時に自分たちの仕事を楽しむことができるのです。

日本のバスケットボールは発展を続け、国際的な存在感も高まっています。ギリシャやヨーロッパのバスケットボールと比較して、競技面やチーム運営の面でどのような違いを感じておられるのでしょうか。また、日本のスポーツ文化で特に印象に残ったことは何でしょうか。
先程もお話ししたように、バスケットボールは世界のどこでも同じです。大切なのは、スポーツを楽しみ、勝っても負けても、そこから学ぶことなのです。その点では、ギリシャやヨーロッパ、日本の間に大きな違いはないと感じています。選手たちはどの国でも全力でプレーしていますし、才能や身体能力についても、特定の国だけに優れた選手がいるわけではありません。
一方で、日本のバスケットボールが大きく発展しているのは確かです。ここ3年ほど、ギリシャでも日本のバスケットボールがどれほど進歩しているか、よく耳にするようになりました。特に、クラブの組織運営や体制、外国籍選手や外国人コーチへの対応など、様々な面で進歩していると感じます。ヨーロッパから来て日本で働く私たちにとって、こうした点は非常に重要です。
そして、私が最も感銘を受けたのが、観客の皆さんです。勝ったチームにも負けたチームにも変わらず敬意を示してくれます。拍手で選手を称え、スポーツそのものを愛し、会場に温かい雰囲気を作ってくれます。観客席から罵声を浴びせるようなこともなく、ただ気持ちのいい声援が聞こえてくるのみです。
私にとって、これこそがスポーツの本来の姿なのです。スポーツは人に喜びや楽しみをもたらし、平和を促すものだと思っています。日本で経験したこの文化を、今後のキャリアでも大事にしていくつもりです。
バスケットボール以外の時間、広島でどのように過ごしておられますか。街や人について、どのような印象を持っているのでしょうか。
家族が日本に来るまでは、毎日の生活は少し単調でした。家と仕事場を往復するだけで、それ以外にあまりすることがありませんでしたからね。今は家族と一緒に暮らしているので、生活が大きく変わりました。レストランで食事をしたり、カフェに行ったり、散歩をしたりしながら、街や人について少しずつ知ることができています。
特に印象的なのは、人々の親切さと、困っている人を助けようとする姿勢です。外国人である私にとって、その親切さは日常の様々な場面で感じられます。市役所に行く時も、レストランを訪れる時も、ただ街を歩いている時も同じです。例えば、ギリシャで慣れ親しんだものとは違ったセルフレジのシステムが導入されているスーパーマーケットであっても、人々は快く私を助けてくれます。言葉の壁でコミュニケーションが困難な時でさえ、彼らの親切な対応は本当に特別なものでした。
広島は美しく平和な街で、食事や散策を楽しんだりリラックスしたりできる場所がたくさんあります。山や川、滝など、この地域の自然もとても気に入っています。家族で訪れるのにぴったりの場所ですね。
また、清潔さにも驚かされました。街のどこへ行っても清潔に保たれていて、人々が街とその文化を大切にしていることが伝わってきます。自分が住む街や国を大切にすることは、とても重要なことだと思います。
最後に、広島の歴史について触れずにはいられません。市街地を訪れ、原爆投下後の復興の様子を目の当たりにすると、被害の甚大さと、同時に人々が前に進んできた力強さの両方を感じます。日本に来る前は、歴史やテレビを通して広島で何が起こったのかを知っていた私ですが、しかし、実際にここに来て、あの悲劇から築き上げられたものを目の当たりにすると、過去の痛みと未来への希望の両方を感じます。広島の人々は近代的な都市を築き上げ、平和という目標に向かって前進し続けているのです。
日本料理はお気に召しましたか。
大好きです!日本料理はギリシャ料理とはかなり違います。味付けも調理法も、肉の切り方まで違います。私はスープが大好きなのですが、日本で食べられるスープはほとんど全部試したんじゃないかと思っています。どれも本当に美味しいですね。妻とレストラン巡りをして色々な料理を試して楽しんでいます。私は、日本料理は世界でもっとも優れた料理の一つだと心から信じています。
これまでに食べた日本料理の中で、特にお気に召したものはありますか。
広島の名物料理の一つであるお好み焼きですね。広島にはたくさんのお好み焼きのお店があって、基本的な作り方は似ていますが、お店ごとに独自の工夫が凝らされています。それがまた、お好み焼きの魅力の一つでもあります。それにスープも大好きで、特に玉ねぎや肉を使ったスープが好きです。
そのほかにも感心したのは、お肉の切り方です。薄く均一にカットされていて、形も大きさもとても丁寧に整えられています。これが特に気に入っている点です。
日本で暮らす中で、ギリシャの食べ物が恋しくなることはありますか。特に食べたい料理は何でしょうか。
いい質問ですね!そうですね、ムサカ(*ナス、ジャガイモ、ひき肉、ベシャメルソースなどをオーブンで重ね焼きした料理)やパスティチョ(*マカロニ、ひき肉などをオーブンで重ね焼きした料理)でしょうか。どちらもギリシャを代表する料理ですが、ヨーロッパのほかの国でも、なかなか見つけることはできません。この二つが私が一番恋しいと思う食べ物です。

それでは最後に、広島ドラゴンフライズのファンの皆さんへメッセージをお願いします。
毎試合応援してくださるファンの皆さんに心から感謝します。広島の近隣から遠方まで、アウェイゲームであっても駆けつけてくださる皆さんには感謝しかありません。ファンの皆さんがチケット代や交通費などを負担してまではるばる応援に来てくださっているのだということを、私たちは皆よく理解しています。
勝っても負けても、いつもそばにいてくれるファンの皆さんの存在は、私たち全員にとって本当に大きな意味を持っています。チーム全員…コーチ、スタッフ、選手、そして経営陣まで、皆さんの温かい支援に心から感謝しています。そんなファンの皆さんが求めるものは、私たちがコート上で全力で戦い、常に闘志を燃やしてプレーする姿だと思っています。その期待に応えていくつもりです。
今日はありがとうございました。今シーズン、チームが目標を達成できるようお祈りしています。
こちらこそありがとうございます。ギリシャ語でお話しすることができてとても嬉しかったです。インタビューの機会をいただき光栄でした。本当にありがとうございました。
こちらこそありがとうございました。
photos: Junko Nagata ©GreeceJapan.com
GreeceJapan.comアーカイブ:B.LEAGUE PREMIER:広島ドラゴンフライズ、アルティーリ千葉を相手に開幕無敗の7連勝