GreeceJapan.com独占インタビュー:SSFF & ASIA 2019でJ-Wave賞・ギリシャのゴツィス監督

2019年5月29日(水)から6月16日(日)まで都内各地で行われている短編映画の祭典・ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2019(SSFF & ASIA 2019)のプログラムのひとつ、「地球を救え!」部門で今年ギリシャのディミトリス・ゴツィス監督のドキュメンタリー映画『第四の壁(ギリシャ語題:Τέταρτος Τοίχος – テタルトス・ティホス/Fourth Wall)』がJ-WAVEリスナー審査員により選定されるJ-WAVEアワードを受賞した。

29日(水)映画祭のオープニングイベントで行われた授賞式にギリシャから駆け付けたゴツィス監督にGreeceJapan.comは独占インタビュー。今作が短編3作品目となるギリシャの新鋭に本作について、また監督自身についてお話を伺った。

授賞式でのゴツィス監督

トロフィーを手に受賞の喜びを語るゴツィス監督

授賞式に駆けつけたカキュシス駐日ギリシャ大使(右)とアンドリオティス在日ギリシャ商工会議所会頭(左)


インタビュー:Junko Nagata – GreeceJapan.com

日本にようこそ。「地球を救え!プログラム」でのJ-WAVE賞の受賞おめでとうございます。どういったきっかけから、日本の映画祭への参加を決断されたのでしょうか。

ショートショート フィルムフェスティバル & アジアはアジアで最も重要な映画祭のひとつであり、また短編映画の映画祭としても重要な位置を占めています。短編映画を制作する者にとって、この映画祭に参加できることは名誉なことです。

なぜこの作品を『第四の壁』と名づけられたのでしょうか。

この作品、『第四の壁』は第三世界に生きる人々の運命を描いたものです。また脚本は私が撮影のために旅した中でしたためたメモ書きや旅程に基づいています。撮影を続けた後、編集作業を行なう瞬間が訪れた時、私は自分が残したこういったメモ書きが撮影した映像よりも多くのことを語っていると気づきました。
映画において「第四の壁」とは、決してカメラが映し出すことの出来ないシーン、つまりカメラを置いたその場所のことを意味します。私はこの映画のタイトルが言うカメラが映し出すことのないシーンと、我々が社会の中で見ることのない様々な現実とを比喩的に結び付けたかったのです。

この作品では、様々な地域に住む人々を用いて一つの映画に作り上げるあなたの手法が印象的でした。沈黙をもって、またはわずかな言葉で悲惨な現実を直接的に、力強く描いています。どのように撮影場所や出演者を選ばれたのでしょうか。

映画の素材を集めるため、私は10か月に渡って単身旅を続けました。訪れた先々で、これまでに見たことのない何か新しいものが私を導いたのです。
ギリシャ国外ではレバノンのGhalia Fayad女史、またギリシャではStefi & Lynx Productionsの依頼を受けこのプロジェクトを担当したアレクサンドラ・アレクサンドラキ女史という、本作のプロデューサーでもあるこの二人の助けを得て、協力して気候変動の中から見て取れる世界中の社会の劣化について調査を行った結果、我々はこの作品で描いた地へと導かれたのです。
気候変動が単なる極地の氷山の融解や気温の上昇といったものではないことを理解することはとても重要です。シリアでの戦争も、こうした気候変動と無縁ではないのです。2011年のシリア危機と同時期に発生した農民らによる騒乱は、3年あまりに渡って当地に雨が降らないことに起因するものでした。
あらゆる気象問題、また一般的な環境問題は、直接的に人々の運命を左右し、これを脅かします。作品で私はこうした問題が人々に与える様々な影響について描こうと試みましたが、その中で、一人一人の人間にフォーカスをあてることによって、その背後に抱える問題そのものを浮かび上がらせようとしたのです。彼らがどこから来たのか、また撮影が行われた場所にも特別な意味はありません。私たちは例えば、エチオピアに生きる人々、または日本に生きる人々も同じように抱える問題を提起したかったのであり、またそれは我々ギリシャに生きる人々の問題でもあるのです。

これまでに制作された2作品はどちらもフィクション映画でしたが、今回どうしてドキュメンタリーを撮影しようと思われたのでしょうか。

前作2作品で私が試みたのは、リアリズムの練習としてシーンを記録することにより、現実を描写することでした。誰もそこにカメラが置かれていると気に留めないようカメラを設置して…しかし当然ですが、脚本がフィクションである以上それは難しい問題でした。
私が聞いたことのある格言の中にこんなものがあります。「最も偉大なフィクション映画は、ドキュメンタリーである」とね。時に現実は映画のストーリーが描くよりさらに壮大なファンタジーであるというのは本当のことです。『第四の壁』を制作して分かったのは、ドキュメンタリーとは魔法のようでもあり、またこの上なく困難なものであるということです。はじめにシナリオといった映画の世界があり、監督の世界はその後に続くものである、それがドキュメンタリーだと。フィクションの対局にあるものとして、俳優たちが存在しないドキュメンタリーはある種孤独なものであり、おそらくはその点が私と合ったのでしょう。いずれにせよ、私に合った映画的表現であることは確かです。またチャレンジしてみたいと思っています。

次の作品は長編作品になるのでしょうか?

すでにここ数か月、長編フィクション映画を制作する準備を重ねています。長編映画にはより長い時間がかかることは確実ですし、また当然多額の費用も必要です。しかし幸運にも支援を得られる目途が立ちましたので、近いうちに具体的な計画を立てるためのいい知らせが得られることでしょう。
また長編映画の製作準備と並行して、私の頭の中では毎日ドキュメンタリー制作のための様々なアイデアが浮かんできています。恐らく、ドキュメンタリーは私にとって日々のストレスを吹き飛ばし、創造的に物事を考えるための瞬間なのでしょう。フィクション映画と合わせて、長編ドキュメンタリー映画についても議論を重ねているところです。

日本映画はお好きですか?日本人監督と日本映画の作品を一つずつ挙げてください。

もちろん日本映画は好きです。しかし、数多くの監督の中から監督を一人、作品を一つ選ぶのは私にとってとても難しいことですし、必ずしも何か一つだけをあげることがよいとは思いません。
日本映画には我々に影響を与えた多くの傾向と潮流があります。私が大学で学んでいた時、極東の映画に関する授業がありました。そこで、映画制作で用いられる日本の伝統的な方法に私は魅了されたのです。カメラは動かないままで、私を魅了してやまないある種の力強さを保っている-そのことが思い出されます。
ギリシャと日本とについて語る時、もっとも重要であることのひとつとして、ソドリス・アンゲロプロス(テオ・アンゲロプロス)と黒澤明という二人の世界的映画監督の間に育まれた深い友情を私は忘れることができません。そして、今こうして私が日本にいること、また自分がギリシャと日本が持つ深淵な文化と伝統の一部であることに心から感謝したいと思っています。

どうして映画監督という道を選ばれたのでしょうか。

昔から常に何かしら創造的なことに関わりたいと考えていました。それが何かは分かりませんでしたが。そして学校を卒業する最後の年に幸運にも信頼できる教師と出会い、彼女は私の中に何かを見出したのでしょう、いくつかの映画を観るよう勧めてくれたのです。この瞬間から、映画とは何かについて探求するようになりました。このきっかけが、私の人生を変えてくれたと信じていますし、彼女には感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとうございました。

ゴツィス監督の『第四の壁』受賞の瞬間

ディミトリス・ゴツィス

1987年アテネ生まれ。イギリス・ダービー大学のFilm Studies and Broadcast Media学科で学んだ後、2作品目の短編「Spectrum」は世界各地の国際映画祭で上映されている。本作『第四の壁』は3作品目にして初のドキュメンタリー。

フィルモグラフィー

2012 Hidden Life
2014 Spectrum
2018 Τέταρτος Τοίχος

『第四の壁』スタッフ

監督:ディミトリス・ゴツィス
脚本:ディミトリス・ゴツィス、マリア・カネロプール
撮影: ディミトリス・ゴツィス
編集: チェ(Che)・パヌソプロス、フリストス・カレツォス
音響:Oxyzed, ミケス・ビリス、レオニダス・ペトロプロス
音楽:ミケス・ビリス、レオニダス・ペトロプロス
エグゼクティブ・プロデューサー:Ghalia Fayad
プロデューサー: Stefi & Lynx Productions, アレクサンドラ・アレクサンドラキ
2018年/9:37

オープンイベント会場に展示された各賞のトロフィー

Photos: Junko Nagata / GreeceJapan.com

 

永田 純子

永田 純子

GreeceJapan.com 代表。またギリシャ語で日本各地の名所を紹介する  IAPONIA.GR, 英語で日本を紹介する JAPANbyweb 、および 英語版ニュースのGreek.world の共同創設者。

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