GreeceJapan.com独占インタビュー:「古代演劇クラブ」-ギリシャ古代喜劇にかける思い

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Mικρὸν ἂν σχολάσαις ἡμῖν χρόνον ; - “ちょっとお時間よろしいですか?”
シロスの言葉より-メナンドロス「エピトレポンデス」 218-361

古代ギリシャ喜劇の巨人メナンドロスの「エピトレポンデス(Επιτρέποντες / Epitrepontes)」が今、古代ギリシャ語でよみがえる-しかし、それは作家の祖国ギリシャではなく、遠く離れた日本の、それも現役の大学生たちによるものだと知ったら、あなたはどう思うだろうか?GreeceJapan.comでは3月25日(水)・26日(木)に行われる公演を前に、公演を行う東京大学文学部西洋古典学研究室を中心に結成された「古代演劇クラブ」を代表して、演出の岡本卓郎さんにお話を伺った。

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舞台上、古代演劇クラブのメンバーの姿。

古代演劇クラブ結成の経緯についてお聞かせください。

東京大学駒場キャンパスで演劇活動をしていた自分は、ギリシア演劇に興味をもって西洋古典学研究室に進学いたしました。そのことを研究室の葛西康徳教授にお伝えすると、「元々東大の西洋古典の始まりは演劇の上演にある。君たちもやってみたらどうか」とおっしゃっていただき、それが最初のきっかけとなりました。

実は、東大におけるギリシア演劇の上演には偉大な先例があります。当時学生だった久保正彰先生や呉茂一先生などが1950年代より始められた、東大ギリシア悲劇研究会です。この通称「ギリ研」による公演が挙げた華々しい成果がきっかけとなって、東京大学文学部に西洋古典学研究室が設置されました。

葛西教授が教えてくださった彼らに関する資料や、ギリ研について書かれた論文などを読むうちに、「ギリ研のように大規模に、そして長期に渡って活動することはすぐには不可能でも、そのような活動を現在の西洋古典学研究室にも学生主体で出来るということを示すひとつのモデルケースとして、演劇をやってみよう」という話が持ち上がりました。小規模でも一度やっておけば、いずれまた第二のギリ研をやろうと思い立った人々が現れたときに、一つの指針になるかもしれないと思ったのです。

当初は役者まで含めて研究室の学生で、という企画でしたが、自分が駒場でやっていた学生演劇の仲間たちに声をかけてみると、ギリシア語など見たこともないような人たちから企画の面白さを共感していただきました。現在のクラブ内は、ギリシア語の原文や注釈を読み、解釈や字幕原稿を作る西洋古典学や西洋史の学生のいる部門と、駒場演劇界が主な出身母体であり、舞台や衣裳、仮面などを作るスタッフ、あるいは実際に演じる役者たちのいる部門に分かれており、密接に協力しあいながら活動しています。いま思えば、すべて研究室の学生でやっていたら、きっと企画段階で頓挫していたと思います。かつてのギリ研も、当時駒場で盛んだった学生演劇の人々から協力を得ています。演劇を上演することの難しさは、きっと古代でも変わらなかったことでしょう。

なぜ喜劇を選ばれたのか、そして、なぜ古代ギリシャ語による公演なのでしょうか。

当初のクラブでは、学生で集まって翻訳された悲劇(「アイアース」など)を役ごとに分かれて読み合わせをし、舞台上の出入りなどをシミュレーションしたりしながら、上演作品を選定していました。その折に、法学部出身というご経歴を持つ葛西教授から「古代アテナイの私的仲裁制度を扱った面白い作品がある」と言われ、候補にあがったのがメナンドロスの「エピトレポンテス」でした。

クラブ内でも、「ギリ研は悲劇をやったから、自分たちは喜劇で!」という軽いノリから盛り上がり、その後メナンドロスのどの作品を上演するかでも意見がわかれましたが、様々な要因で「エピトレポンテス」の仲裁部分である第二幕を上演することになりました。メナンドロスの研究を精力的に為されているBrown UniversityのAdele Scafuro教授が書かれた論文の読書会を有志で行っていた影響もありました。教授は今回の公演の期間に来日され、観劇していただけることになりました。

なぜ原語上演かというと、まずはお客様に興味を持っていただくため、企画の独自性を考えた結果でした。古代ギリシア語の韻文は音読すると音の響きや韻律がとても美しく、きっとご満足いただけるだろうと思います。また、喜劇の性質に合わせて、という側面もあります。テーマ自体が普遍で重厚な悲劇と異なり、喜劇は当世風のものです。日本語に訳すと、当時の笑いのつぼを現代風に変える必要があり、劇のイメージは大きく変わってしまいます。その時代をよりイメージしていただけるよう、また「笑える」台本の勢いを殺さないように、原語上演にチャレンジしようということになりました。意外と日本語で言うと笑えないことが、ギリシア語だと笑えたりします。

最後に、西洋古典学研究室が主体となった公演として、自分たちにしかできない公演にしようという強い想いがありました。原語での上演は、ギリシア語に関してはずぶの初級者だった自分が演出を付ける上では大きな壁となりましたが、西洋古典学研究室と西洋史学研究室の方々の多大な協力で成り立っています。また、役者たちは最初ギリシア語のアルファベットもわからない方たちでした。彼らはギリシア語を一から勉強し、舞台に立っています。クラブ内の全員に共通するのは、この想いだと思います。

最後に、ギリシャ・日本のそれぞれのGreeceJapan.comのファンの方々へ、公演を前にひとことお願いします。

ギリシアの皆様へ。
皆様の先達が残してくださった偉大な作品群は永遠に不滅です。その灯火を絶やさないよう、全力を尽くして参ります。

日本に在住のギリシア人の皆様へ。
古代ギリシア語上演ですので、日本語がわからなくてもまったく問題ありません。2300年前のコメディを、ぜひご覧にいらしてください。心よりお待ちしております。

日本の皆様へ。
古代ギリシア語上演ということで、敷居を高く感じていらっしゃる方もおられると思いますが、日本語字幕も映しますのでご安心ください。また、演出面では最大限お客様にお楽しみいただけるよう、現代的にアレンジした部分もございます。これをきっかけに、ギリシア演劇に興味を持っていただけたら望外の幸せです。会場でお待ちしております。

・Greek Text

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第2回公演のフライヤーより。

[ 第2回公演 EPITREPONTES Act.2&3/公演詳細 ]

【脚本】 メナンドロス
【演出】 岡本 卓郎
【出演】 梅村 和宏 / 越久 裕也 / 川嶋 晃仁
【公演場所】 東松原ブローダーハウス
【公演期間】 2015年3月25日(水)-26日(木)/各日14:00・19:00(2回)
【チケット】一般:当日2000円 前売1500円 / 学生:当日800円 前売500円

・古代演劇クラブ/公式サイト(公演情報・チケット予約情報)
・東松原ブローダーハウス

 

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